ニュース

総合歴史学科在学生の紹介

【シリーズ〜卒業研究を振り返って〜vol.3】2023年度 卒業研究体験記

2024-03-01

 「シリーズ〜卒業論文を振り返って〜」の第3回です。卒業研究の取り組みを振り返り、その方法や学びについて綴ってもらいました。

*****

中務 順方(渡邉ゼミ)

 

 私は卒業研究で蜀漢の皇帝である劉禅について執筆しました。劉禅は、古代中国の三国時代の人物です。彼に対する世間一般の評価はあまり良いものではなく、暗君としてのイメージが定着しています。私は劉禅が本当に暗君であるのか疑問に思い、彼の人物像を再検討するに至りました。

 もともと歴史が好きで、その中でも特に古代中国の三国時代について興味を持っていた私にとっては、このテーマを決めること自体はそれほど難しくありませんでした。大まかにテーマが絞れたのは3年の後期はじめあたりです。しかし、研究をするにあたって、劉禅に関する先行研究や参考文献が圧倒的に少ないことが問題となりました。対策として私は歴史書の『三国志』を主に読み解き、その中に出てくる劉禅と関わりの深い人物や事象を逐一調べるようにしました。その結果、劉禅の「諡号」(死後に贈られる名前)といったような、新たな着眼点を見出すことができました。もちろん先行研究や参考文献を広く調べることは大切なことではありますが、一つの資料を徹底的に分析していくことも大事だと思いました。

 この卒業研究の結論として、劉禅は暗君と呼ばれるほどの人物ではないと私は考えました。今改めて振り返ると、これは非常に曖昧な結論であったと思います。しかし、この研究を行うにあたってあることを再認識することができました。それは、歴史書の編纂や人物の評価などには時代背景が大きく影響しているということです。例えば、『三国志』が執筆された背景には、三国時代の次の王朝である西晋が国家としての正統性を示すといった理由も含まれています。このように、編纂者や発言者の意図を考えること、つまり物事が行われる理由を認識・理解するということは、社会や日常生活において必ず役に立つものであると学びました。

*****

林 篤宏(渡邉ゼミ)

 

 「露中の関係が日本へ与えた影響」についてまとめようと考えたのは、もともと中国の歴史に興味があり、調べていくうちに露中の外交関係に関心を持ったからです。3年生時点で第一次世界大戦から現代までの露中関係の論文を多く発見したことに加えて、ここ数年のロシア外交への関心から卒業研究のテーマを決定しました。

 資料は図書館の蔵書やインターネットのデータベースを参照して収集しました。さらに、それらに付随する参考文献の中から必要なものを選び、資料を探しました。日本・ロシア・中国の外交を調べるにあたって、現代の動向は新聞社の記事も参考にしました。そうして収集した文献から、自身の研究に必要な部分のみを抜き出して分析し、自分の考えをまとめる作業に長い期間を費やしました。地道な作業でしたがそれら全てが自身の考察を補強し、説得力を強めるために重要な役割を果たしました。

 また、多くの資料を読み込むことによって、新たな課題と考察すべき問題点を発見することができました。私の場合は1章分を書き終えるごとに先生やゼミの人達に意見と質問を貰い、考察の不備や誤字脱字を修正していきました。できる限り人に見せる機会を増やすことで、考えをまとめ易くなりました。時間をかけて書き上げていくことによって自分の考えを慎重に整理し、まとめることができました。

 卒業研究を進めていく過程で学んだことが多数あります。私の卒業研究では、悩んだ時や行き詰まった時に他者の意見を積極的に聞くことで新たな視点が生まれ、研究を進展させることができました。また、自身の考えが正しく伝わるように文章に起こし、推敲する作業は研究の完成度を向上させました。このようにして計画性や文章力を身に着けることができたことも学びの成果であると考えています。きちんと計画を立てて物事に取り組み、他者に正しく伝わる表現方法は、これからの人生においても役立てていけるものだと思います。