臨床薬学教育研究センター

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臨床薬学教育研究センター Research center

フロア画像

大学病院薬剤部と同規模施設の実習環境のもとで、実習を通して薬剤師業務の全般を学びます。調剤業務に関連する知識や技術の修得にとどまらず、専門科目 で得た知識を現場で活用することにより問題解決能力を磨きます。問題解決型の演習により実践力を養うとともに、医療に貢献できる倫理観、使命感、責任感、臨床判断力を養うことを目的とします。臨床薬学教育研究センターでは実務経験が豊富な教員により、現場に即した実習を体験します。それにより、患者さんを中心としたチーム医療の中で、薬剤師の役割を発揮できる能力を獲得して下さい。

センターの概要 Center overview

センターの概要

スタッフ(2023年度現在)

  • 加地 弘明(准教授・臨床薬学教育研究センター長)
  • 北村 佳久(教授)
  • 名和 秀起(教授)
  • 島田 憲一(教授)
  • 毎熊 隆誉(准教授)
  • 田坂 祐一(准教授)
  • 河野 奨(講師)
  • 出石 恭久(講師)
  • 吉井 圭佑(助教)

施設(薬学棟U館3階)

  • 調剤室
  • 一般製剤室
  • 注射製剤管理室
  • 無菌製剤室
  • 薬品情報室 Drug Information(DI室)
  • 模擬病室
  • 薬物治療管理室 Therapeutic Drug Monitoring(TDM室)
フロアマップ

センター長メッセージ Message from the Director

6年制薬学教育を受けた卒業生が、薬剤師国家試験に合格し、社会で活躍し始めました。これからの社会が求める薬剤師は、薬の専門家に加えて、チーム医療の中で薬に責任をもつ医療従事者になっていくことが予想されます。医薬品は化学物質ですが、薬と向き合う薬剤師は化学物質の向こう側に、真のステークホルダーである病気に苦しむ患者がいることを十分に理解している豊かで温かい心を持っています。患者によりよく効く薬、今までの薬よりも安全に使える薬、今まで治療薬がなかった疾患に対する薬など、さまざまな薬が必要とされ、新しい薬が次々に世に出てきています。しかし、薬は、正しく、適正に使用しなければ、十分な有効性は発揮されず、望ましい安全性も確保されません。臨床薬学教育研究センターでは、病院での調剤業務などの経験者である各教員がそれぞれの研究テーマに基づき、最先端の研究を行い、5年生や6年生の卒業研究を指導しています。また、4年生でのOSCE前に、長期実務実習で必要とされる実技と心構えを習得するために、実際の病院や薬局と比べても孫色のない調剤室、DI室、TDM室、模擬病室での実習を指導しています。大学での実習と長期実務実習の現場での実習は、これからの薬剤師に求められる高度の技術と、チーム医療でのチーム内のコミュニケーション、患者とのコミュニケーションを身に付けた薬剤師の育成に役立っています。

臨床薬学教育研究センター長
加地 弘明

センターの主な活動 Main activities

病院・薬局実務実習(臨床実習)の前に大学で行う、実務実習事前学習を担当しています。

各教員は、以下にあげる臨床系の科目を担当しています。

  • 1年次:早期体験学習
  • 3年次:薬局管理学, 医療統計学, 調剤学, 医薬品情報学, 薬学対話演習
  • 4年次:医療薬学, 処方解析学, 薬剤師職能論, 応用薬学総合演習
  • 5年次:病態と薬物治療, チーム医療, 専門薬剤師概論, 薬剤管理指導概論, 医薬品等評価学

病院・薬局実務実習の成果が上がるように、実習を引き受けていただける病院や保険薬局の指導薬剤師の方や、岡山県病院薬剤師会や岡山県薬剤師会と連絡を取り、改善に務めています。

中国四国地区の調整機構や調整機関と共同で、薬学生の実務実習の配属先調整に協力しています。

地域の病院・薬局と協力して、薬物や生体内物質の体内濃度の測定による治療や病態の研究、ジェネリック医薬品を含めた医薬品の品質・有効性・安全性の研究を行っています。

地域の薬剤師(卒業生も含む)を対象とした勉強会を開催したり、岡山県薬剤師会や岡山県病院薬剤師会で行われている勉強会にも参加しています。

NPO法人響き合いネットワーク 岡山SP研究会と協同して、医療コミュニケーション教育に必須である模擬患者(Simulated Patient:SP)の育成に協力しています。

岡山治験ネットワークに参加しています。

地域研修支援室としての役割

地域における病院・保険薬局薬剤師の生涯教育や研修・研究の支援施設です。 スタッフが常駐し、医療薬学に関する教育・研修・研究の計画立案、臨床薬学教育研究センター内の機器使用、勉強会・会議などの支援を行います。地域の病院と連携して共同研究も行っています。

写真:
模擬患者養成講座の様子(岡山SP研究会ホームページより)

実務実習 事前学習 Practical training Practicum learning

臨床薬学教育研究センターにおける実習内容と実習施設をご紹介します。

調剤実習
実習場所:調剤室

調剤は以下の仕事の流れを含みます。すなわち、処方箋の受理→処方箋記載事項の確認→処方監査→疑義照会→薬袋作成→調剤→自己 鑑査→調剤鑑査→薬剤交付という業務の流れがあります。実習では、代表的な処方箋を例題として、処方監査(飲み合わせや薬用量についてのチェックなど)や 疑義照会のやり方、薬袋の作成などを学びます。その後、錠剤、カプセル剤、外用剤などの計数調剤、さらに散剤、液剤、外用剤などの計量調剤を行います。次 に、調剤者自身(学生)と別の薬剤師(教員)とが調剤した薬剤についてそれぞれ鑑査を行います。最後に、患者さんに効果、用法・用量、使用法、副作用など の薬剤に関する情報を伝えるための薬剤情報提供書を作成します。

服薬指導実習
実習場所:調剤室、受付カウンター、模擬病室

この実習では、薬剤師が調剤薬を患者さんに交付する場面を想定して、学生間や教員との間でロールプレイを行います。その際、薬の効能・効果、用法・用量、使用上の注意点などの医薬品情報を伝えるだけでなく、患者さんからのご質問やご相談にも対応できる実 践力を養成します。さらに、服薬能力、家族構成、病態などの患者背景を配慮した適切な服薬指導ができるよう、コミュニケーション能力や臨床で必要な知識を 高めていきます。

製剤実習1(院内製剤)
実習場所:一般製剤室

臨床現場では患者さんの病態やニーズに既製の医薬品では対応できない場合が想定されます。この様な場合には、医師の求めに応じ薬剤師が院内で調製する医薬品(院内製剤)があります。院内製剤に代表される薬局製剤の定義、その役割を学んだ後、坐剤や含嗽水(うがい薬)などの調製 方法を学びます。本実習により、製剤の基本的知識と調製を行う技術を高めていきます。

製剤実習2(TPN)
実習場所:注射製剤管理室、無菌製剤室

手洗い・無菌室への入室方法やクリーンベンチ内での混合操作を学んだ後、アンプルの封入、滅菌および点眼剤 の無菌製剤の調製を行い、基本的な無菌操作を習得します。また、高カロリー輸液療法(Total Parenteral Nutrition :TPN)に用いられる薬剤のチェックや水分量、電解質の内容と量、カロリー量の計算を行った後、TPNの調製・混合操作および鑑査を行います。

医薬品管理実習
実習場所:注射製剤管理室、ミーティング室

病院・薬局における医薬品の管理と供給を正しく行うため、医薬品管理の流れや毒薬・劇薬や麻薬・向精神薬の管理や取り扱いなどについて、法的規制の観点から学びます。 また、シロップ剤、散剤あるいは注射剤について、代表的な配合変化の組み合わせを経験し、その性状や外観の変化を観察します。これらを通して内服薬、外用薬、注射薬の取り扱いに関する基本的知識と技能を習得します。

TDM(Therapeutic Drug Monitoring)実習
実習場所:薬物治療管理室

TDMという概念は、薬物の血中濃度を測定し、薬物の体内動態を薬物速度論により把握します。そして合理的な投与計画を 立て、次回の薬物療法に反映させることを目的とします。本実習ではTDX/FLX、HPLC、LC/MS(液体クロマトグラム質量分析計)など、最新の分 析機器を使い、薬物血中濃度を測定します。そして、手計算やパソコンソフトによるシミュレーションを用い、医師に最適な薬物治療計画を提案することができ るよう、実習を行っています。また、地域の医療現場におけるTDMにも対応することを考えています。

DI(Drug Information)実習
実習場所:薬品情報室

薬品情報室には医療情報を検索するコンピュータ端末や医薬関連の雑誌を保有しています。またプレ ゼンテーション設備を利用すれば、生涯教育の施設として活用することも可能です。地域の医療に貢献する開かれた情報拠点となります。 DI実習では医薬品添付文書やインタ ビューフォームなど医薬品情報源の種類や特徴を学びます。情報源としてのインターネットやデータベースを用いて、医薬品の相互作用や副作用などの情報検 索・収集を行います。そして、薬学的立場から内容を評価・選択した後に整理し、臨床現場のニーズに応じた情報提供ができるような演習を行います。

処方解析実習
実習場所:ミーティング室

本実習はPBL(Problem Based Learning:問題解決型学習法)による処方解析演習を基本とします。まず、薬剤の処方意図を正しく把握するために、糖尿病や気管支喘息などの代表的 な疾患の処方例を用いて、グループ学習により処方薬から疾病を予測や疾病の病態調査、重症度の考察などを行います。そして、予想される副作用や相互作用を 考察し、患者に発生するかもしれない問題について対応・解決の能力を養成します。

OSCEとは What is OSCE

Objective Structured Clinical Examination(客観的臨床能力試験)

従来の4年制薬学教育における病院・薬局の実務実習は見学型の実習であり、調剤などを指導薬剤師のもとで見学していたのが実情です。実地能力を高めることを目的とした6年制薬学教育においては、5年次以降に病院および薬局で参加型の長期実務実習(6ヶ月)を受けなければなりません。そこでは調剤や患者接遇における技術・態度について体験を通して学びます。
しかし、薬剤師免許がない学生が参加型の実習を受けるためには、実務実習の前段階で調剤や患者接遇に関する基本を学ぶ必要があります。そして、実務実習を受ける前に、調剤や患者接遇に関する技術や態度ならびに知識が修得できているかを判定されます。技術や態度を判定するには、ペーパー試験では判断できません。そのために、与えられた課題に対する実技を、予め定められた観点から各行為の確実性をワンステップずつ判断して 行くものです。この実技試験がOSCE(オスキー)と呼ばれるものです。 例えを挙げるならば、自動車教習所で第2段階の路上教習に進むため、実技試験と学科試験を受けて仮免許を与えられるか否かを判定されることと同じでしょうか。OSCEは実技試験、CBTは学科試験に相当すると言い換えても良いかもしれません。