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人文科学専攻発表会

修士論文中間報告会開催

2023-07-12

2023年7月6日(木)17:00より、A112教室において、大学院人文科学研究科の修士論文中間報告会が開催されました。今回は、歴史学領域2年次の2名による報告でした。報告者と題目は以下の通りです。

三輪竜太「毛利氏における御四人体制の成立について」
綾 悦子「江戸後期における備前河本家の存在形態―蔵書・文化・ネットワーク」

三輪報告は、戦国大名毛利氏において、若き当主輝元を支える体制として成立した「御四人体制」について検討したものです。従来、毛利氏「御四人体制」は戦国大名の領国支配の官僚制的機構の存在を見出そうという観点から注目されてきました。しかし、「御四人体制」の実効的な部分や、当主による人格的支配との共存関係について等、主要な論点について未検討の部分が多いことを指摘します。毛利家文書の元亀三年「毛利氏掟」の分析を通じて、この問題について新たな見解を提示していくという指針が示されました。

綾報告は、岡山城下の有力商家・河本家の文化・経済活動について検討したものです。これまで町人文化研究は三都を中心になされてきたという問題を指摘し、河本家の分析の意義を述べます。河本家の政治・経済的な位置付けを分析し、これを踏まえて、蔵書等の収集活動に注目して、京都・大阪との文化的ネットワークの存在を析出しようとする試みです。特に宇喜多や児島高徳を祖とする河本家の由緒形成が、このネットワーク形成に寄与している点を指摘する意欲的なものでした。

質疑は、両者ともに修士論文執筆にむけ更なる論点の整理の必要性、全体的な構成の問題等が提言されました。長時間にわたり活発な議論が展開されました。