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教育心理学科講演会・研究発表会

平成30年度 就実心理学会 学生企画講演会報告

2019-03-04

平成30年度就実心理学会学生企画「被災者の心のケア―西日本豪雨 被災体験の語りと対話」を実施しました。

講師として,西日本豪雨の被災地・倉敷市真備町の病院に勤務する子育て中の女性心理職の坂元歩美さん(倉敷市)と被災地支援朗読会を定期的に開く朗読グループ代表の江草聡美さん(岡山市北区)をお迎えしました。

講演会は2部構成で実施されました。講演会の開会にあたり、被災地で亡くなられた方に全員で黙とうを捧げました。

第1部では,江口聡美さんから,東日本大震災での石巻市大川小学校で多くの子どもの命が失われた悲劇についてお聞きしました。そして,同小学校で被害にあった小学生の母親らが,亡くなった子を思い、前に向いて歩む気持ちを綴った絵本「ひまわりのおか」などが朗読されました。江草さんは「被害を忘れず,われわれが被災地の人たちの思いを継承することが大切」とお話しになりました。

第2部では,坂元さんから,スライドや写真を見ながら、災害後ストレス反応の段階にそって、被災前後の経験や感情をお聞きしました。被災者同士や支援者の助け合いの有難さを実感しつつも,ふだん大切にしている身の回りのものが失われる悲しみや,被災しながらも周りの役に立てない申し訳なさ,一時的にテンションが高くなること,断念せざるを得なかったマイホームの夢など貴重な体験をお聞きすることができました。これに対して,悲嘆臨床の専門家であり,多くの被災地支援活動の経験がある本学教員の山本力教授が,坂元さんの体験を整理し,意味づけを行うなどしました。坂元さんは,災害時に起こる一連の感情は,異常な体験に対する正常な反応であることや,時間経過や段階に即して変化することを知っていたことが,自らの体験や気持ちを理解し,整理することにつながったとお話になりました。被災者の心のケアの重要性と難しさ,また,心理臨床家の支援の必要性など多くのことをお聞きしました。坂元さんは,「被害の程度に関わらず,被災者は日常が失われた大きな悲しみを背負っている。被災者の心のケアに際してはまず,『被災者が自分と全く違う体験をしていること』を理解し,尊重することから始めて」とお話になりました。

今回の講演会は、支援者を目指す学生一人一人が,学びを深め,今日からの実践にいかせるよい機会となりました。

 (この講演会は、大学院2年生が企画・運営をしました。) E.N.