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総合歴史学科 在学生の紹介

【シリーズ〜卒業論文を振り返って〜】2023年度 卒業研究体験記

2024-03-20

 2023年度も、総合歴史学科の有志の学生に、卒業論文を執筆した経験や学びについて綴る卒業研究体験記を寄稿してもらいました。これから卒業論文のテーマの設定や執筆に取り組むみなさんや、専攻を検討しているみなさんの参考となれば幸いです。

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羽根 菜々子(苅米ゼミ)

 

 私の卒業研究のタイトルは「天文年間における神辺城の攻防について」です。この研究テーマを決めたのは、3年次になってからでした。先行研究や史料が少なかったことから、このテーマで卒業研究を進めていくことができるのか不安に感じ、テーマを変更しようかと悩んだこともありました。そのため、私が本格的に卒業研究に取り組み始めたのは、4年次になってからです。

 私が最も大変だったと感じた部分は、史料収集です。私の研究の場合、城を守る側に関する史料がほとんど残っていないことや、年月日が不明である書状の検討が課題でした。そうした中でも、年代や場所、人物名等を手がかりにして、4年次の8月くらいまでに史料収集と書き下し、現代語訳を進めました。そして910月は、集めた史料から年表を作成し、戦いの流れの把握や全体の考察をしていきました。実際に執筆し始めたのは、11月になってからです。11月にもなると、提出日が近づくことに焦りが出てきましたが、それまでに考察を進め、おおよその結論を出すことができていたため、計画的に執筆していくことができました。

 卒業研究を進めている時は、不安や焦りを感じることもありましたが、自分が集めてきた史料から結論を出すことができ、先生に確認して頂くことによって、自信をもって提出することができました。卒業研究に取り組むことで、知識を深めることができ、史料を読解する力がつきました。また、スケジュールの管理や必要な情報を収集した上で根拠をもって意見を述べること、読み手を意識することなどの大切さを学びました。卒業研究を通して学んだことを、社会に出てからも忘れず、役立てていきたいと思います。

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伊津 結那(三田ゼミ)

 

 私は、「松江城下町における白潟漁師仲間をめぐる諸関係―18世紀から19世紀を中心に―」をテーマとしました。地元のことを卒業研究でやってみたいと思っていたので、『松江市史』に掲載されている史料を読み、漁師についての史料が面白そうだな、もっと史料を読むことで分かることがあるぞ!と思い、この研究テーマにしました。

 卒業研究を本格的に執筆し始めたのは4年次の後期だったため、自分の書きたいことが書ききれるか不安でした。また、執筆する際に史料をしっかり読んでおかないと書くことが難しいと感じました。三田ゼミでは、3年次と4年次前期の授業で一つの史料を「読み下し→現代語訳→内容のまとめ→考察」のレジュメを作ります。授業を通して、読み下しをして現代語訳をする力、史料から読み取れることを隅々まで読み取る力がつき、卒業研究を執筆する際に、とても役に立ちました。しかし、まだまだ史料から読み取れることを隅々まで読み取る力は足りないと感じました。

 この卒業研究を行う上で、史料を探し史料を読むということも重要ですが、私は松江城下町を実際に歩いてみることもしました。漁師の住んでいた町がどこか、漁をしていた場所の広さや網を仕掛けていた場所はこのあたりかな、などと考えながら歩きました。実際に見て感じることで、史料を考察するときにもどのくらいの規模なのかを想像することができました。自分で歩いてみることで新しい発見があり、ワクワクしながら研究を進めることができたと思います。このような主体的に行動することの大切さを実感することができ、自分にとってとても良い経験になったと感じました。

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曽我部 斎(小林ゼミ)

 

 中世末期の英仏百年戦争で活躍し、処刑されたジャンヌ・ダルクに興味を持っていた私は、卒業研究で彼女の「異端審問と復権裁判の経緯」を明らかにしました。当初は、彼女の戦場での実際の活躍について研究したいと考え、3年次にそれに関わる史料を収集しました。しかし、彼女の戦場での活動期間が実質2年間と短かったため、史料(その中でも邦訳されている史料)が少なく、自分が望むような研究は非常に難しいとわかりました。そこで研究の方向性を修正し、先述の卒業研究のテーマにたどり着きました。

 研究テーマの変更により、中世ヨーロッパの裁判やキリスト教的概念や教会法についての知識を身に着けることが必要となり、これに非常に苦労しました。というのも、使用した史料は15世紀フランスでおこなわれた教会裁判の記録(邦訳)であり、その内容の核心を読解し分析するには、当時の法や宗教についての知識が不可欠であったからです。専門的な事典や先行研究や別の史料を参考にし、指導教員に尋ね、不明な点をひとつずつ解決していきました。

 私が所属したゼミでは、4年前期末までに各自1万字の草稿を作成することを目標にしていました。前期の初めころはとても苦労しましたが、後期に入ってからは余裕をもって執筆を進めることができました。授業では、ゼミ生同士で執筆途中の論文を相互に読み、話し合う機会が設けられ、ゼミ生たちからの質問や指摘のおかげで何が必要で何が不必要なのかを確認することができました。また、他のゼミ生の論文を客観的に読むことで、吸収すべき点を吸収し、自分の論文に反映させることで、質の向上にも繋がりました。

 卒業論文の執筆やこうした他者との話し合いを通して、自分の考えを相手に表現する難しさを知り、その克服の仕方を習得できたと思います。また、目的を適切に変更・修正しつつ、計画的に物事を進めていくことの重要性を学ぶことができました。

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守田 歩未(小林ゼミ)

 

 女性の社会進出が増えていく近年の動向を受けて、女性史について興味を持っていた私は、特に男性中心社会であったといわれている古代エジプトの女性に注目しました。卒業研究を進めるにあたり、まずおこなったことが先行研究を集めることです。自分が扱いたいテーマについての先行研究を読み進めることで、新しい知識と研究動向を把握し、自分の書きたい内容を固め、卒業論文の基礎を造り上げていきました。その後、実際に当時記録された史料を読みました。私が扱った史料は、古代エジプトに建てられたオベリスクと呼ばれる石碑に刻まれた碑文です。この碑文は、ヒエログリフで書かれていたため、その英訳を卒業研究では使用しました。

 卒業論文を執筆する際に難しいと感じた点は多々ありました。碑文は、古代エジプト独自の世界観で書かれており、日本語に訳してもその本意を理解することは簡単ではありませんでした。古代エジプトについての更なる知識が必要となり、それを踏まえながら自らの解釈へと展開しました。先行研究を踏まえつつも、どこまで自分独自の解釈をしてよいのか、という判断がとても難しく感じました。また、先行研究がそもそも根拠としている史料は一体どういうものなのか、ということを探ることも容易ではありませんでした。この作業のために、本学図書館や県立図書館の蔵書だけでなく、他大学にしかない書籍を使用しなければならないこともありました。しかし、一連の作業を通じて先行研究の更なる裏付けができ、自分の知識を深めることにも繋がりました。

 卒業研究の作成には、時間を計画的に使うことがなによりも大切です。特に、他の施設から史料や書籍を借りるのには時間も要するので、そういうことも考えながら作業を進めていかないと自分の納得のいくものは完成しないと思います。スケジュール管理をしながら卒業研究と向き合ったこの期間は、自分にとって大変有意義な時間となりました。

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中務 順方(渡邉ゼミ)

 

 私は卒業研究で蜀漢の皇帝である劉禅について執筆しました。劉禅は、古代中国の三国時代の人物です。彼に対する世間一般の評価はあまり良いものではなく、暗君としてのイメージが定着しています。私は劉禅が本当に暗君であるのか疑問に思い、彼の人物像を再検討するに至りました。

 もともと歴史が好きで、その中でも特に古代中国の三国時代について興味を持っていた私にとっては、このテーマを決めること自体はそれほど難しくありませんでした。大まかにテーマが絞れたのは3年の後期はじめあたりです。しかし、研究をするにあたって、劉禅に関する先行研究や参考文献が圧倒的に少ないことが問題となりました。対策として私は歴史書の『三国志』を主に読み解き、その中に出てくる劉禅と関わりの深い人物や事象を逐一調べるようにしました。その結果、劉禅の「諡号」(死後に贈られる名前)といったような、新たな着眼点を見出すことができました。もちろん先行研究や参考文献を広く調べることは大切なことではありますが、一つの資料を徹底的に分析していくことも大事だと思いました。

 この卒業研究の結論として、劉禅は暗君と呼ばれるほどの人物ではないと私は考えました。今改めて振り返ると、これは非常に曖昧な結論であったと思います。しかし、この研究を行うにあたってあることを再認識することができました。それは、歴史書の編纂や人物の評価などには時代背景が大きく影響しているということです。例えば、『三国志』が執筆された背景には、三国時代の次の王朝である西晋が国家としての正統性を示すといった理由も含まれています。このように、編纂者や発言者の意図を考えること、つまり物事が行われる理由を認識・理解するということは、社会や日常生活において必ず役に立つものであると学びました。

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林 篤宏(渡邉ゼミ)

 

 「露中の関係が日本へ与えた影響」についてまとめようと考えたのは、もともと中国の歴史に興味があり、調べていくうちに露中の外交関係に関心を持ったからです。3年生時点で第一次世界大戦から現代までの露中関係の論文を多く発見したことに加えて、ここ数年のロシア外交への関心から卒業研究のテーマを決定しました。

 資料は図書館の蔵書やインターネットのデータベースを参照して収集しました。さらに、それらに付随する参考文献の中から必要なものを選び、資料を探しました。日本・ロシア・中国の外交を調べるにあたって、現代の動向は新聞社の記事も参考にしました。そうして収集した文献から、自身の研究に必要な部分のみを抜き出して分析し、自分の考えをまとめる作業に長い期間を費やしました。地道な作業でしたがそれら全てが自身の考察を補強し、説得力を強めるために重要な役割を果たしました。

 また、多くの資料を読み込むことによって、新たな課題と考察すべき問題点を発見することができました。私の場合は1章分を書き終えるごとに先生やゼミの人達に意見と質問を貰い、考察の不備や誤字脱字を修正していきました。できる限り人に見せる機会を増やすことで、考えをまとめ易くなりました。時間をかけて書き上げていくことによって自分の考えを慎重に整理し、まとめることができました。

 卒業研究を進めていく過程で学んだことが多数あります。私の卒業研究では、悩んだ時や行き詰まった時に他者の意見を積極的に聞くことで新たな視点が生まれ、研究を進展させることができました。また、自身の考えが正しく伝わるように文章に起こし、推敲する作業は研究の完成度を向上させました。このようにして計画性や文章力を身に着けることができたことも学びの成果であると考えています。きちんと計画を立てて物事に取り組み、他者に正しく伝わる表現方法は、これからの人生においても役立てていけるものだと思います。

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花房 友斗(井上ゼミ)

 

 私は入学前から漠然と、太平洋戦争の海戦の1つであるレイテ沖海戦における、栗田艦隊の反転について研究したいと考えていました。栗田艦隊の反転については様々な先行研究がある中、決定的な説が出ていないため私自身で答えを出したいと思い、卒業論文として取り組むことにしました。最初は広く情報を集めるべく、12年の頃は太平洋戦争に関連する資料を集めて読んでいました。3年前期になると、範囲を少し狭めて日本海軍の資料を調べていました。

 卒業論文の方針を決めたのは、3年後期でした。私は表題を「栗田艦隊を反転に導いた判断要因について」として、栗田長官という人物に焦点を当て、反転の謎に取り組むことにしました。表題を決めて以降は、より範囲を絞って、レイテ沖海戦の栗田艦隊関連の資料を読み込みました。4年になって構成を考え、執筆を始めました。夏休みから本格的に執筆を行い、何回も構成を変更しながら形にしました。夏休み明けから提出までは担当教授と修正作業を行い、卒業論文を仕上げていきました。

 苦労したのは表題決定後の葛藤と、教授との修正作業でした。表題決定後、卒業論文としての独創性と、答えがでるのかという2点で悩みました。この悩みは、資料の読み込みと、毎日構成を考えたことで解決しました。教授との修正作業は、卒業論文を添削する形で行い、添削した箇所の意見交換を行いました。自信を持って書いた文章が添削まみれで返却されたときは非常に心に来ました。教授との意見交換でも、毎回痛いころを突かれましたが、添削と意見交換を繰り返すことで、卒業論文を磨き上げることができました。

 卒業論文は全て1人で作り上げます。表題決め、資料集め、構成、文章作成、スケジュール管理などの段取りは1人で行い、独りよがりにならないようにするために、他者とコミュニケーションをとることも重要でした。これらは社会人として仕事を行う事と同じであると感じ、いい勉強の機会となりました。

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枝木 大空(中山ゼミ)

 

 私は「笠岡諸島・石の島「白石島」「北木島」の 日本遺産としての価値と石産業の現状」を卒業研究のテーマとして、今まで注目されることが少なかった白石島の石産業について調査しました。

 私が卒業研究のテーマを大まかに決めたのは大学2年生の時です。賈鍾壽教授の歴史遺産研究の授業で、地域のことをパワーポイントでまとめて発表する際に笠岡諸島について調査したことで興味を持ち、少しずつ関連する書籍や論文を読み始めました。早い段階から方針を固め、資料を集めて参照するものに見当をつけていたものの、いざ書き始めると、どの資料の何ページを参照するのかをメモしていなかったためにもう一度探すという手間が必要になりました。有用な資料を見つけた際には、著作者と出版社、発行年月日と共に参照箇所をメモしておくのが大切であると感じました。

 資料を用いた調査によって、白石島の大正から昭和にかけての最盛期には石材会社が約60社あったものの、現在は2社のみであることが分かりました。夏休みに実施した現地調査によって、石産業の現状や採石・割石の手順を知ることもできました。実際に、石産業に携わる方たちから石材の特徴や価値、明治から大正にかけての石産業の隆盛を伺い、研究をより深いものにすることができました。また、現地調査のとき実際に石割などの仕事を体験させていただき、伝統的な石産業を続けていくために様々な知識や技術が必要であること、自然を相手にする仕事の難しさを身に染みて感じました。現地調査は当事者から話が伺えるほか、何よりも写真を撮影でき、視覚的にわかりやすい論文にすることができる点で有効であると感じました。

 卒業研究を進める上で、とにかく書いてみないと全体像も章ごとのまとまりや繋がりもわからないので、文字に起こすことが大切だと思います。何事もやってみる精神をもち、これからの生活に生かしていきたいです。

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石原 瑶子(中塚ゼミ)

 

 私は「SNSの情報にみられる男性化粧の規範性」というテーマで卒業論文を書きました。近年、化粧品ターゲット層の拡大や、化粧品広告塔に男性芸能人の起用など、男性と化粧との関係が変化しています。さらに動画や写真などを含むSNSの情報など、男性の美容系YouTuberInstagramを利用したインフルエンサーによる化粧方法の指南のほか、化粧品の商品紹介や使用した感想を気軽に得ることが可能になりました。このように、SNS上においても化粧をした男性を目にする機会が増えたことで、男性自身が化粧をすることに対して障壁が低くなっているのではないかと考えました。

 そこで、私の卒業論文では、男性の化粧が広まっている要因は、情報収集のツールとして日常的に利用されているSNSの発達に関連していると考え、主に動画投稿サービスを提供するYouTubeと、写真や動画などを投稿するInstagramの情報に着目し調査しました。そして、男性に求められる化粧のあり方や、男性と化粧との関係を考察しました。その結果、①化粧によって「身だしなみ」が整った「清潔感」のある姿が現在の男性に求められている、②理想化された「ナチュラル」を基準として「隠す」化粧と「見せる化粧」がある、③「他者」や「自己」に良い影響を与えることを動機づける男性に向けた化粧という3つの規範性がみられました。

 卒業論文の執筆に取り組む中で大変だったことは、自分が考えたことを正確に文章化することです。「読み手がどう感じるか」を意識しながら、主語述語の関係や文の構成などに注意して執筆しました。また中塚先生に何度も添削していただいたことで、どのような言葉遣いや文章の構成が適切なのかが段々と身に付いていきました。

 私は卒業論文を通じて、これまでにない経験がたくさんできました。約1年間1つのテーマと向き合い、ゼミの仲間や先生と意見交換をしながら、長い文章を執筆しました。この経験はこれから生きていくなかで大切な思い出になると思います。

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野口 あゆみ(中塚ゼミ)

 

 私は「アンドロイドにおけるジェンダーの表象――ロボット学者・石黒浩の言説の検討を通して」というテーマで、卒業論文を執筆しました。SF作品で生み出されたアンドロイドは、技術の進歩により現実社会のさまざまな分野で活躍しています。本来、性別のないロボットに性別を与えることはどういうことなのか、アンドロイドのジェンダーは社会のジェンダー観にどのような影響を与え、社会からどのように影響を受けているのかを明らかにし、社会学的に考察しました。調査方法として、アンドロイド研究の第一人者である石黒浩の手記やエッセイを検討し、フィクションに登場するアンドロイドのジェンダーの表象と対比して考えました。また、石黒の手がけるアンドロイドを性別の視点から「男性型」「女性型」「性別が曖昧な型」の3つに分類して分析しました。特定の性別を付与されたアンドロイドは、従来のジェンダー・イメージに基づいており、ルッキズムやエイジズムの価値観や社会のジェンダー観を再生産しているという結論に至りました。

 卒業論文の執筆において学んだことは、考察のもととなるデータ収集の大切さと、スケジュール管理の大切さの2点です。私は文献の分析をもとに調査研究を行いました。できるだけ多くの先行研究やテーマに関連する文献を集め、読み込むことが、考察を深めていくうえで重要な作業だったと感じています。また、卒業論文を書き進めていくなかで、何が起こるかはわかりません。急に体調を崩したり、内容の構成の変更を決めたりなど、想定外のことが、締め切りが近づいているなか起きました。私はスケジュール管理ができておらず、ぎりぎりになってしまったのですが、計画を立て、早めに行動することを徹底するべきだと身に沁みました。中塚先生には時間がないなか、何度も添削をしていただき、なんとか書き切ることができました。

 アンドロイドとジェンダーの研究を通して、文献を読んで自分の考えを明確にもち、それを文章にまとめる能力が身に付きました。また、社会で共有されるジェンダー観やルッキズムの価値観について深く考えるきっかけになり、その視点をもつことができました。

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