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表現文化学科 講演会・集中講義等

令和3年度 表現文化学会総会・学術講演会が開催されました

2021-11-08

日程:2021年11月6日

令和3年11月6日土曜日、2021年度表現文化学会学術講演会が開催されました。今年はメディア文化史をご専門とする神戸市外国語大学准教授の山本昭宏さんにお越しいただき、「水木しげると戦後日本 傷痍軍人・貸本漫画・妖怪」というタイトルでご講演いただきました。会場には本学科の学生を招き、感染対策を徹底したうえで講演を聴いてもらいました。山本さんのご講演は、戦後日本を代表する漫画家である水木しげるの初期作品を分析しながら、そこに彼の戦争体験、南方体験、そして「戦後」経験がどのような痕跡を残しているかを明らめるものでした。山本さんはまず、水木が激戦地・ニューギニアからの復員兵であったという事実から語り始め、戦場で片腕を失ったことや、占領下の非軍事化政策のもとで軍人恩給が廃止されたために困窮を強いられたことなど、漫画家としてデビューするまでの水木の経歴を丁寧に説明してくださいました。戦争の記憶を忘却することで「戦後」の再出発を図ろうとした日本社会にとって、一人の傷痍軍人として帰還した水木は招かれざる客であったのではないか、その疎外感が「異形なる者の帰還」というモチーフとして貸本漫画家時代の作品に表れているのではないかという議論は非常に興味深いものであり、会場に集まった学生たちも熱心に聞き入っていました。さらに山本さんは、人間と妖怪や幽霊などが同じ空間の中で違和感なく共存する水木の作品のうちに「異形なる者との共生」というモチーフを見出し、その源泉にアナキスト・石川三四郎の思想的影響があることを指摘したうえで、水木が構想した〈革命〉の可能性について考察されていました。幅広い資料を渉猟しながら思いもかけない繋がりを見出していく語り口は、人文科学を学ぶことの意義・楽しさを十分に伝えてくれるものであり、質疑応答の時間では学生からの質問が相次ぐなど、会場は活気に包まれておりました。また講演会終了後、山本さんは『表現文化だより』編集員の取材を快く引き受けて下さり、学生からのインタビューにも丁寧に応じてくれました。山本さん、どうもありがとうございました。(文責:坂堅太)