就実大学 人文科学部 総合歴史学科

2024.03.15 

【シリーズ〜卒業研究を振り返って〜vol.5】2023年度 卒業研究体験記

新入生研修旅行

 「シリーズ〜卒業論文を振り返って〜」の第5回です。卒業研究の取り組みを振り返り、その方法や学びについて綴ってもらいました。

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石原 瑶子(中塚ゼミ)

 

 私は「SNSの情報にみられる男性化粧の規範性」というテーマで卒業論文を書きました。近年、化粧品ターゲット層の拡大や、化粧品広告塔に男性芸能人の起用など、男性と化粧との関係が変化しています。さらに動画や写真などを含むSNSの情報など、男性の美容系YouTuberInstagramを利用したインフルエンサーによる化粧方法の指南のほか、化粧品の商品紹介や使用した感想を気軽に得ることが可能になりました。このように、SNS上においても化粧をした男性を目にする機会が増えたことで、男性自身が化粧をすることに対して障壁が低くなっているのではないかと考えました。

 そこで、私の卒業論文では、男性の化粧が広まっている要因は、情報収集のツールとして日常的に利用されているSNSの発達に関連していると考え、主に動画投稿サービスを提供するYouTubeと、写真や動画などを投稿するInstagramの情報に着目し調査しました。そして、男性に求められる化粧のあり方や、男性と化粧との関係を考察しました。その結果、①化粧によって「身だしなみ」が整った「清潔感」のある姿が現在の男性に求められている、②理想化された「ナチュラル」を基準として「隠す」化粧と「見せる化粧」がある、③「他者」や「自己」に良い影響を与えることを動機づける男性に向けた化粧という3つの規範性がみられました。

 卒業論文の執筆に取り組む中で大変だったことは、自分が考えたことを正確に文章化することです。「読み手がどう感じるか」を意識しながら、主語述語の関係や文の構成などに注意して執筆しました。また中塚先生に何度も添削していただいたことで、どのような言葉遣いや文章の構成が適切なのかが段々と身に付いていきました。

 私は卒業論文を通じて、これまでにない経験がたくさんできました。約1年間1つのテーマと向き合い、ゼミの仲間や先生と意見交換をしながら、長い文章を執筆しました。この経験はこれから生きていくなかで大切な思い出になると思います。

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野口 あゆみ(中塚ゼミ)

 

 私は「アンドロイドにおけるジェンダーの表象――ロボット学者・石黒浩の言説の検討を通して」というテーマで、卒業論文を執筆しました。SF作品で生み出されたアンドロイドは、技術の進歩により現実社会のさまざまな分野で活躍しています。本来、性別のないロボットに性別を与えることはどういうことなのか、アンドロイドのジェンダーは社会のジェンダー観にどのような影響を与え、社会からどのように影響を受けているのかを明らかにし、社会学的に考察しました。調査方法として、アンドロイド研究の第一人者である石黒浩の手記やエッセイを検討し、フィクションに登場するアンドロイドのジェンダーの表象と対比して考えました。また、石黒の手がけるアンドロイドを性別の視点から「男性型」「女性型」「性別が曖昧な型」の3つに分類して分析しました。特定の性別を付与されたアンドロイドは、従来のジェンダー・イメージに基づいており、ルッキズムやエイジズムの価値観や社会のジェンダー観を再生産しているという結論に至りました。

 卒業論文の執筆において学んだことは、考察のもととなるデータ収集の大切さと、スケジュール管理の大切さの2点です。私は文献の分析をもとに調査研究を行いました。できるだけ多くの先行研究やテーマに関連する文献を集め、読み込むことが、考察を深めていくうえで重要な作業だったと感じています。また、卒業論文を書き進めていくなかで、何が起こるかはわかりません。急に体調を崩したり、内容の構成の変更を決めたりなど、想定外のことが、締め切りが近づいているなか起きました。私はスケジュール管理ができておらず、ぎりぎりになってしまったのですが、計画を立て、早めに行動することを徹底するべきだと身に沁みました。中塚先生には時間がないなか、何度も添削をしていただき、なんとか書き切ることができました。

 アンドロイドとジェンダーの研究を通して、文献を読んで自分の考えを明確にもち、それを文章にまとめる能力が身に付きました。また、社会で共有されるジェンダー観やルッキズムの価値観について深く考えるきっかけになり、その視点をもつことができました。

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