就実大学 人文科学部 総合歴史学科

2024.02.23 

【シリーズ〜卒業研究を振り返って〜vol.2】2023年度 卒業研究体験記

在学生の紹介

 「シリーズ〜卒業論文を振り返って〜」の第2回です。卒業研究の取り組みを振り返り、その方法や学びについて綴ってもらいました。

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曽我部 斎(小林ゼミ)

 

 中世末期の英仏百年戦争で活躍し、処刑されたジャンヌ・ダルクに興味を持っていた私は、卒業研究で彼女の「異端審問と復権裁判の経緯」を明らかにしました。当初は、彼女の戦場での実際の活躍について研究したいと考え、3年次にそれに関わる史料を収集しました。しかし、彼女の戦場での活動期間が実質2年間と短かったため、史料(その中でも邦訳されている史料)が少なく、自分が望むような研究は非常に難しいとわかりました。そこで研究の方向性を修正し、先述の卒業研究のテーマにたどり着きました。

 研究テーマの変更により、中世ヨーロッパの裁判やキリスト教的概念や教会法についての知識を身に着けることが必要となり、これに非常に苦労しました。というのも、使用した史料は15世紀フランスでおこなわれた教会裁判の記録(邦訳)であり、その内容の核心を読解し分析するには、当時の法や宗教についての知識が不可欠であったからです。専門的な事典や先行研究や別の史料を参考にし、指導教員に尋ね、不明な点をひとつずつ解決していきました。

 私が所属したゼミでは、4年前期末までに各自1万字の草稿を作成することを目標にしていました。前期の初めころはとても苦労しましたが、後期に入ってからは余裕をもって執筆を進めることができました。授業では、ゼミ生同士で執筆途中の論文を相互に読み、話し合う機会が設けられ、ゼミ生たちからの質問や指摘のおかげで何が必要で何が不必要なのかを確認することができました。また、他のゼミ生の論文を客観的に読むことで、吸収すべき点を吸収し、自分の論文に反映させることで、質の向上にも繋がりました。

 卒業論文の執筆やこうした他者との話し合いを通して、自分の考えを相手に表現する難しさを知り、その克服の仕方を習得できたと思います。また、目的を適切に変更・修正しつつ、計画的に物事を進めていくことの重要性を学ぶことができました。

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守田 歩未(小林ゼミ)

 

 女性の社会進出が増えていく近年の動向を受けて、女性史について興味を持っていた私は、特に男性中心社会であったといわれている古代エジプトの女性に注目しました。卒業研究を進めるにあたり、まずおこなったことが先行研究を集めることです。自分が扱いたいテーマについての先行研究を読み進めることで、新しい知識と研究動向を把握し、自分の書きたい内容を固め、卒業論文の基礎を造り上げていきました。その後、実際に当時記録された史料を読みました。私が扱った史料は、古代エジプトに建てられたオベリスクと呼ばれる石碑に刻まれた碑文です。この碑文は、ヒエログリフで書かれていたため、その英訳を卒業研究では使用しました。

 卒業論文を執筆する際に難しいと感じた点は多々ありました。碑文は、古代エジプト独自の世界観で書かれており、日本語に訳してもその本意を理解することは簡単ではありませんでした。古代エジプトについての更なる知識が必要となり、それを踏まえながら自らの解釈へと展開しました。先行研究を踏まえつつも、どこまで自分独自の解釈をしてよいのか、という判断がとても難しく感じました。また、先行研究がそもそも根拠としている史料は一体どういうものなのか、ということを探ることも容易ではありませんでした。この作業のために、本学図書館や県立図書館の蔵書だけでなく、他大学にしかない書籍を使用しなければならないこともありました。しかし、一連の作業を通じて先行研究の更なる裏付けができ、自分の知識を深めることにも繋がりました。

 卒業研究の作成には、時間を計画的に使うことがなによりも大切です。特に、他の施設から史料や書籍を借りるのには時間も要するので、そういうことも考えながら作業を進めていかないと自分の納得のいくものは完成しないと思います。スケジュール管理をしながら卒業研究と向き合ったこの期間は、自分にとって大変有意義な時間となりました。

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