就実大学 人文科学部 総合歴史学科

2018.06.30 

【おすすめ!この1冊vol.001】松田泰代著『徳川日本のナショナル・ライブラリー』の紹介

その他

【書誌情報】松田泰代著,2018,『徳川日本のナショナル・ライブラリー』(日記で読む日本史 16)臨川書店.

 

総合歴史学科 准教授

松崎 博子

 

 現在の‘図書館’は、以前は‘書籍館’(しょじゃくかん、しょせきかん)と、さらにそれ以前は、‘文庫’(ふみくら(文蔵とも)、ぶんこ)と呼ばれていました。

 江戸時代、最大の蔵書規模を誇ったのが紅葉山文庫(もみじやまぶんこ)です。当時は、御文庫(ごぶんこ)などと呼ばれていましたが、江戸城の西南・紅葉山に所在したことから、のちに紅葉山文庫の名称が定着しました。 

 紅葉山文庫では、‘御書物奉行’と‘御書物同心’が、‘御書物’(ごしょもつ)を整理・管理し、具体的には、受入、目録作成、照会、出納、写本、曝書(ばくしょ(虫干とも))をしていました。そのような業務の日誌である『御書物方日記』を本書で読み解いています。 

 紅葉山文庫に関しては、森潤三郎著『紅葉山文庫と書物奉行』および福井保著『紅葉山文庫』という際立った研究書があり、著者はこれら先行研究への補足を試みています。本文の構成(記述内容の選択基準、配列、注釈の付け方)や、使用する用語の説明の不十分さ(たとえば、敢えて‘ナショナル・ライブラリー’という用語を使用する理由の説明)に問題を感じますが、とはいえ、『御書物方日記』を読み下し、御書物同心の人事についておもに調査し、事実関係を整理されたことには敬服いたしますし、本書を読むことで、紅葉山文庫および御書物奉行、御書物同心への興味が掻き立てられました。

 紅葉山文庫に関するわかりやすい図書として、長澤孝三著『幕府のふみくら』および新藤透著『図書館と江戸時代の人びと』があります。本書との併読をおすすめします。また、紅葉山文庫の御書物奉行を題材とした文学作品には、井上ひさし著『秘本大岡政談』、出久根達郎著『御書物同心日記』、福原俊彦著『書物奉行江戸を奔る!』があります。

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