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研究・産学連携

【薬学部】渡邊准教授・豊村准教授・森教授らによる医薬品と糖の代謝に関わる酵素の関係についての研究成果が国際学術誌に受理されました

2025-04-21

 薬学部 薬理学研究室の渡邊准教授・豊村准教授・森教授らの研究グループは、日本や米国で医療用医薬品として用いられている利尿薬がグリオキサラーゼⅠ(GLO1)という酵素を阻害することを見出しました。本研究成果は「Biotechnology and Applied Biochemistry」誌に3月24日付けで受理されました。

 私たちの体は、糖をエネルギーに変える過程である解糖系で「メチルグリオキサール(MGO)」という副産物を少量つくり出します。このMGOは細胞に対して有害であり、「AGEs(終末糖化産物)」と呼ばれる物質を生成します。AGEsは細胞にダメージを与え、さまざまな病気の原因となると考えられています。そのため通常、体内ではGLO1という酵素がMGOを分解・除去する働きを担っています。

 これまでの研究で、過去に利尿薬(尿の排出を促す薬)として用いられた「キネタゾン」がGLO1の働きを抑える作用をもつことを発見しました。そこで、キネタゾンと構造が似ている他の利尿薬についても、同様にGLO1を抑えるかどうかを調べました。
 その結果、現在医療用医薬品として用いられている「メトラゾン」と「アゾセミド」という利尿薬が、GLO1の活性を抑えることが明らかになりました。さらに、これらの薬を細胞に与えると、細胞の増殖が抑えられ、MGO由来のAGEsが蓄積する様子が観察されました。

 本研究では、一部の利尿薬にはGLO1を阻害する作用があり、長期的あるいは高用量での使用が、MGOやAGEsの蓄積を通じて体に悪影響を及ぼす可能性が示唆されました。今後、これらの薬の副作用にMGOやAGEsが関わっている可能性について研究を進めていく予定です。


■論文情報
論文名:Metolazone and Azosemide, Clinically Utilized Diuretics, Exhibit Inhibitory Activity for Glyoxalase I
掲載誌:Biotechnology and Applied Biochemistry (in press)
著者:Watanabe M, Toyomura T, Wake H, Nishinaka T, Hatipoglu OF, Takahashi H, Nishibori M, Mori S