2026.03.19
在学生の紹介
「シリーズ〜卒業論文を振り返って〜」の第4回です。卒業研究の取り組みを振り返り、その方法や学びについて綴ってもらいました。
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古市蒼空(杉山ゼミ)
私の卒業研究のテーマは、「温泉地の日常に溶け込むタトゥー観光客 ―愛媛県松山市道後温泉を事例に―」です。大学1年生の時に初めて道後温泉に行き、建物の景観、周囲の雰囲気、気持ちの良い湯に感動し、道後温泉に強い関心を持ちました。私は、その後も大学の長期休みを利用して道後温泉、道後温泉付近の銭湯に足を運びました。何度も道後温泉に足を運ぶのであれば、いっそのこと温泉をテーマにした卒業論文にしようと思い、研究テーマに温泉を選びました。
温泉に入っているとタトゥーを入れている人に遭遇することがあります。日本では、タトゥーがある利用者の入浴を禁止している温泉施設が存在します。またタトゥーに対して、不快に感じる人もいます。しかし、実際の入浴現場では、騒ぎや問題を起こすことなく、周りの人と同じように普通の入浴が行われています。先行研究では、タトゥーの可否や問題行動が主に取り上げられ、結論では、異文化理解の必要性が強調される傾向にあり、実際の入浴現場の状況は見過ごされてきました。私は、見過ごされてきた部分に注目し、温泉とタトゥーを卒業研究のテーマにしました。
卒業研究を進めていく上で重要なことは、自分でよく考え、人の意見やアドバイスに耳を傾けることです。卒業研究は、基本的に一人で進めていくものですが、他の人からの意見やアドバイスは非常に良い視点になります。先生から添削を何度もしていただき、また、友人からのアドバイスに耳を傾けることでより良い研究になっていきます。独りよがりな研究にならないように注意しましょう。卒業研究を通して、主体的に行動することの大切さ、温泉の魅力に気づくことができ、学生生活の非常に良い経験の一つになりました。

卒論のために作成した、図(筆者と外国人Aの位置)。
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大曽根裕修(中山ゼミ)
私の卒業研究のテーマは「ファジアーノ岡山FCの歩みと成長-元関係者とサポーターの語りから-」です。私自身、岡山で生まれ育ち、身近な存在としてファジアーノ岡山FCを見てきました。J1昇格という大きな節目を迎えたクラブの歴史や地域との関わりについて「このチームはどんな人たちに支えられてきたのだろう」と改めて知りたいと思ったことが研究の出発点です。
クラブ創設期の元関係者と現サポーターへのインタビュー調査を実施しました。元関係者とのインタビュー調査では練習場所も資金も十分ではないなか、地域の人々の協力を得ながら少しずつクラブを発展させていった話を伺い、今のファジアーノ岡山FCの土台が、地道な努力と地域の人々とのつながりの上に築かれてきたことがわかりました。
また、現サポーターへのインタビュー調査では、スタジアムでの応援活動や新スタジアムに関する署名運動を通して「クラブを支えること」そのものが生活の一部になっていることがわかり、ファジアーノ岡山FCが単なるスポーツチームではなく、チームを支える人々の誇りや繋がりを生み出す存在であることを実感しました。
研究を進める中で、インタビュー内容を文字起こしし、文章としてまとめることの難しさにも直面しました。相手の思いや経験を大切にしながら、自分なりの視点を加えることは想像以上に難しく、何度も文章を書き直しました。しかし、その過程で「話を聞くだけでなく、意味を考え、言葉として伝える力」の大切さを学ぶことができました。
卒業研究の執筆を通して、身近な存在だったファジアーノ岡山FCは子どもたちに夢や希望を与える存在であることを、元関係者とサポーターの双方の語りから明らかにすることができました。ファジアーノ岡山FCの歩みは岡山という地域が積み重ねてきた歴史そのものであり、スポーツが人と人を繋ぎ、日常に小さな誇りや希望を生み出していることを、実感することができました。
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杉田萌(中塚ゼミ)
私は「『卒業』と『脱退』にみるアイドルの時間構造―ジェンダー規範の分析―」というテーマで卒業論文を執筆しました。私は以前から、男性アイドル、女性アイドルを問わずアイドルという存在そのものに強い関心を持っており、そのなかで両者の活動のあり方やグループ離脱の仕方に違いがあることに疑問を抱くようになりました。こうした身近な関心を出発点として、その違いがどのような社会的構造やジェンダー規範によって生み出されているのかを明らかにしたいと考え、本テーマを設定しました。
研究を進めるにあたっては、まず先行研究を読み、アイドル研究や時間意識論、ジェンダー論の視点を整理しました。そのうえで、女性アイドル88名、男性アイドル33名を対象とした量的分析を行い、活動開始年齢や活動期間の差異を明らかにしました。さらに、平野紫耀、前田敦子、平手友梨奈、中島健人の4名を事例として、SNS上の反応の質的分析を行い、ファンの受容の特徴を検討しました。
執筆過程で特に大変だったのは、量的分析と質的分析をどのように結び付けて論じるかという点でした。そして、データを示すだけでなく、それを理論と結び付けて説明することの難しさを実感しました。また、構成の修正や表現の見直しを何度も行うなかで、文章を書く力の不足も痛感しました。その際には先生から丁寧なご指導をいただき、論理の組み立て方や学術的な文章表現について多くを学ぶことができました。
本研究を通して、一つのテーマに長期間向き合い、自ら問いを立てて分析する力の重要性を学びました。この経験は、今後の学びや社会生活においても大きな財産になると考えています。
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吉田澪生(中塚ゼミ)
私の卒業研究のテーマは、「社会的排除と周縁化―『闇バイト』に関わる若者の背景と誘因―」です。近年、「闇バイト」が社会問題として注目されていますが、私はその背景にある若者の置かれた社会状況に関心を持ち、研究を進めました。具体的には、単に個人の判断により生じた問題としてではなく、教育や就労、生活の不安定さなどの構造的な要因から考察することを目的としました。
まず先行研究を検討し、社会的排除という概念を通して若者を取り巻く状況について理解を深めていきました。その上で、警察庁や各都道府県の警察署が公表している統計資料を用い、「闇バイト」に関する現状を整理しました。資料の量が多く、必要な情報を抜き出してまとめる作業には時間がかかり、地道な作業の連続でした。
次に、「闇バイト」の勧誘文を収集し、それらの言説分析を行いました。①高額報酬の提示による経済的な訴求、②安全性の強調、③匿名性の高い連絡手段への誘導、④婉曲表現など、共通する表現方法が段階的に用いられていることに気づいたときは、データを分析することの面白さを実感しました。また、警察関係者へのインタビュー調査を通して、現場で捉えられている課題や若者の実態を知ることができ、資料だけでは見えない側面を理解する貴重な経験となりました。
卒業研究を通じて、物事を一面的に見るのではなく、背景や構造を丁寧に考える姿勢の大切さを学びました。これから卒業研究に取り組む後輩の皆さんには、早めに準備を始め、自分が本当に関心を持てるテーマを選ぶことを勧めたいと思います。困ったときは指導教員に相談しながら、自分なりの視点で研究を進めてほしいと考えます。この経験は、今後の学びや人生において大きな糧になると感じています。