2025.02.26
在学生の紹介
「シリーズ〜卒業論文を振り返って〜」の第2回です。卒業研究の取り組みを振り返り、その方法や学びについて綴ってもらいました。
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井手 唯人(山本ゼミ)
私は、「大ドイツ芸術展」というナチス・ドイツが行った美術展を卒業研究のテーマとしました。卒業研究のタイトルは「第三帝国の芸術——ナチス政権時代の芸術プロパガンダと大ドイツ芸術展」です。
そのテーマを設定する前から卒業研究では近現代ドイツ史について書こうと考えていましたが、なかなか決めることができず悩んでいました。どのテーマであれば自分自身が楽しく卒業研究に向き合えるのかと自問自答した結果、美術品が好きなことに改めて気づき、ドイツ美術史を卒業研究のテーマにしようとの考えに至りました。4年生になる直前の春休みには小林先生ご担当の学科の専門科目「総合歴史演習2」の特別研修でミュンヘンに行く機会があり、ナチスが美術品を展示していた「芸術の家」を訪れたことで、そこで1937年に開催された「大ドイツ芸術展」を研究したいと思うようになりました。
私が卒業研究で苦労したことは、先行研究を集め、読み込むことです。ナチスについて書かれた文献はホロコーストや第二次世界大戦関連のものが多く、美術に着目した研究は多くはありませんでした。私が研究を始めた当初は2冊ほどしか研究書が見つからなかったため、何度も本屋に通ったり、インターネットで探したりしました。その結果7冊ほどにはなりましたが、それでもゼミ仲間と比べれば少ない方でした。
ゼミの指導教員である山本先生からは先行研究と史料をもとに具体的な事例・情報を収集し分析する重要性を聞いていたため、焦りと不安がありました。ですが同時に先生からは情報量の重要性と同時に読み込みも重要だと伺っていたため、私は文献数が多くはない分、とくに英語とドイツ語の文献を繰り返し精読しました。分からない単語があればすぐに調べ、難しい文章は何度も読み込むことで、卒業研究に繋げると共に自分の知識を深めることができました。
引用の仕方や参考文献の書き方など、卒業研究で必須とされる能力は3年生の段階からゼミで学ぶため不安なく書くことができました。また卒業研究で重要とされる「はじめに」の書き方やどのようなタイトルを付ければ良いかなども実践的に学習していくので、自然と書く力がついていきました。分からなくなった時はすぐに先生に確認し、いただいたアドバイスをもとに何度も修正を重ねました。
卒業研究では時間の管理が重要です。先行研究と史料を読み込むことはとても時間がかかる作業のため、提出期限直前に読み始めると、形式面にまで注意を払うことが難しくなります。多くの研究文献を読み、数えきれない時間を費やした卒業研究執筆は、私にとって様々な知識を深めることができた有意義な時間となりました。
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渡邊 悠斗(山本ゼミ)
私はソヴィエト連邦の宗教政策を研究テーマとし、「「科学的な国」による宗教の認識——ソヴィエト社会主義の宗教政策」と題する卒業研究を執筆しました。大学入学以前から近現代ヨーロッパ史に興味がありましたが、大学1年時の2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した事件をきっかけにロシア(ソ連)のイデオロギーや思想についてとくに関心を持ち、この研究テーマに決定しました。
卒業研究執筆に向けた作業に本格的に着手したのは3年生の後期からでした。このテーマについて研究している日本人がほとんどいなかったため先行研究探しには苦労し、最終的には英語文献だけでなくロシア語文献にも目を通しました。ソ連の初代指導者レーニンは反宗教的な思想を普及させるために教育を重視していたことから、教育関連の文献も参照しました。史料としては、レーニンが著した『国家と革命』のほか、レーニンが参考にしたマルクスやエンゲルスの著書、レーニンと対立していたボグダーノフの著書なども用いました。日本で出回っていない史料・書籍は、“Marxists Internet Archive”という社会主義者の著書がまとめられたウェブサイトで公開されているものを使用しました。現在のロシアの社会情勢ゆえに、現地に足を運んで史料調査・フィールドワークができなかったことが少し残念です。
私が卒業研究を通して学んだことは、行き詰った時には少し視点を変えてみることが重要であるということです。私の研究テーマは政治思想史であるため、どうしても抽象的な議論にならざるをえないところが少なからずありました。「思想」や「イデオロギー」に関する先行研究や史料を何度読み返しても「答え」が見出せなかったとき、一歩引いてみて「ロシアという国の状況」「ロシア人に根付いたアイデンティティ」に着目することにしました。この視点の切り替えによって今まで見えてこなかったものが見えるようになったおかげで、より深い議論・考察につながり、一定の説得性がある結論を導き出すことができたと感じています。
自分一人では、視点を変え、視野を広げることは困難です。ゼミの仲間や先生から様々な意見をもらうことで新たな発見があり、一人では考えつかなかった議論を展開することが可能になります。卒業研究は、一見一人で進める孤独な作業に思えますが、実はみんなと協力して行う「チームプレイ」なのです。