就実大学 人文科学部 総合歴史学科

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2015.12.15 

2016年度 史学会主催・踊共二氏講演会「山の表象文化論 ― アルプスはいつから美しいか」の記事を掲載しました。

講演会

就実大学史学会では、2015年12月12日(土)に「山の表象文化論 ― アルプスはいつから美しいか」と題した公開学術講演会を開催しました。講師は、踊 共二(おどり・ともじ)武蔵大学人文学部教授(人文学部長)でした。踊先生はヨーロッパの宗教改革とスイス史がご専門であり、日本の西洋史学界を牽引する代表的研究者のお一人です。

 

 

今回のご講演は、中世以来、危険で陰鬱な場所とされてきた山岳(具体的にはアルプス)が、啓蒙主義やロマン主義以降、崇高なもの、美しいものとして描かれ るようになったとする旧来の説明に対し、①中世やルネサンスの絵画にも山の聖性や美しさを描いたものがあること、②啓蒙主義やロマン主義の担い手たちは、実は海洋文明や都市文明を進歩の基準としており、山の暮らしを遅れた世界とみていたこと等を指摘し、より正確でニュアンスに富んだ山岳イメージの変遷を提示しようとしたものでした。また、論拠として次々に紹介される西洋名画(ヤン・ファン・エイク、ダ・ヴィンチ、ヴォルフ、ターナー、カラム、セガンティーニなど)にも思わず目を奪われました。

 聴講者は、本学教員のほか、一般の方が10名余り、そして学生が90名弱でした。講演終了後に回収した多数の「感想」の中から、ごく一部を取り出して紹介しておきましょう。

 

  • 「山がテーマと聞いて、最初はあまり興味が湧かなかったけれど、実際に講演を聴いてみたらとてもおもしろかった。絵からその時代の考え方が読み取れることに驚いた。」
  • 「今までスイスについては、観光についてか、傭兵についてかぐらいしか聞いたことがなかったので、今日のお話はとても新鮮だった。」
  • 「絵画を観るとき、ついその絵の主題ばかり観てしまいがちなので、今回のように背景(山岳)に焦点を当てて分析することは目新しく感じた。中世の人々が山を恐ろしいものと考えていたらしいということも、マテューの「三次元(海洋・平地の都市・山岳)の歴史」という提案も、目からウロコだった。時折冗談も交えられていて、最後まで楽しく聴くことができた。」
  • 「前近代の絵画に描かれたアルプスに美しいものはないと言われていることに驚いた。《シェレネン峡谷の悪魔の橋》がその名を表しているかのような色彩やタッチで、その様子がよく伝わった。絵画から読み解く形だったため、終始楽しく聴くことができた。内容の組み立て方など、勉強になる部分がたくさんあり、来てよかったと思った。」
(櫻田 記)

 

 

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