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教育心理学科その他

山田美穂先生のテキサスレポート その2

2016-11-24

こんにちは。教育心理学科教員の山田美穂です。今回は、こちらの大学院の授業でお話をさせていただいたことをレポートします

 

日にちは10月5日、科目は「カウンセリング心理学コロキウム」という授業で、受講生は博士課程の大学院生12人でした。コロキウムとは、「毎回異なる講師が異なるテーマで講義する形式のセミナー」という意味です。

 

アメリカで授業だなんて、さぞかし英語がペラペラなのだろうと想像してもらえそうですが、正直なところペラペラには程遠く、毎日コミュニケーションに苦労しています。ですので、アーロン先生からお話をいただいた時には「冗談かな…?」と思ったのですが、二度とできない経験かもしれない!先生の気が変わる前に!と勇んでお引き受けし、時間をかけて準備をしました。与えられたテーマは、「日本文化と日本人のカウンセリングについて」。受講生の約半数がすでに現場での臨床経験を積んでおり、日本人や日系アメリカ人のクライエントを担当する場合もあるので、文化の違いを学んでおくことが大事だということでした。

 

今回に限らず、テキサス大学でもそれ以外の場所でも、一人ひとりが違う文化背景を持っていることを知り、それを尊重しながらかかわるにはどうしたらいいか、というテーマに出会うことがとても多いです。「マルチカルチュラル(多文化的)」というキーワードをとてもよく耳にしますし、他人事ではなく、私自身の日本人としての経験や価値観が尊重され、興味を持ってもらえて、一緒に学ぼうとしてもらえるという体験を何度もしています。

そして、それに答えようとするときに、日本ってどんな国だろう、日本人ってどういう人のことだろう、これまで私は相手の文化を尊重していただろうか、「マルチカルチュラル」を自分のこととして考えたことがあっただろうか等々、今まで意識してこなかったたくさんのことに気づかされます…そんなことを考え出すとどんどんまとまらなくなってしまうので、今回の授業は、日本人の対人関係や自己表現の特徴という点に焦点を当てて準備をしました。

 

当日は、せっかくなので日本から持参した浴衣を張り切って着ていきました。が、キャンパス内を歩いていても、すれ違う学生さんたちからのリアクションがほとんどないことにちょっと拍子抜けでした(自意識過剰で恥ずかしいですが、注目されたりするかもと期待していたのです)。でも、考えてみると、まさに多文化の人たちが集まっているキャンパス内で、民族衣装を着ている人や独創的なファッションの人はたくさんいるので、そんなに珍しい光景ではないのでしょう(もう一つの大きな要因と思われる「若者はおばさんのおしゃれには興味がない」という事実には、目を向けないことにします)。

 

さて授業本番、大学院生さんたちはとても熱心に耳を傾けてくれました。「英語が拙くてごめんなさい、でも皆さんはカウンセラーなので、私の心からの言葉を感じ取ってくれるだろうと信じています」と言うと、うんうんとうなずいてくれました。「日本では教師はこんなふうに着物を着て授業をするんですよ」と言うと、「へえー」と信じてしまわれそうになったので、「冗談です」と否定して、笑いをとることができ、心の中でガッツポーズでした。

 

日本の授業風景とは明らかに違うと感じたのは、何人もの受講生がどんどん手を挙げて質問をしてくれることでした。わからないことも恥ずかしがらずに言う堂々とした姿をうらやましく感じました。日本に帰ってから、自分の授業でもそういう雰囲気を作れないだろうか?ただ真似しようとするのではなく、日本の、就実の「文化」に根差した工夫ができないだろうか?という、個人的テーマができました。就実の学生の皆さんと、一緒に探っていけたら嬉しいです。(2016年11月24日)