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総合歴史学科教員の活動

【研究こぼれ話vol.004】特別編 オンライン授業をふりかえって(第1回)

2021-03-03

コロナ禍に思うこと

  

総合歴史学科 教授 

井上 あえか 

 

 オンライン授業は突然に始まり、怒涛のように私たちを巻き込んだ。4月から8か月あまり、途中対面授業復活を挟んでいつもと違う一年を経てきて、世の中ではオンラインも悪くない、という意見が出てくるのを聞くと、思うことがある。感染症は人が会うところで広がるので、それを避けようとすれば人が分断される。オンラインで講義も議論もできるけれど、それはほとんどの場合、知っている人同士が会おうとして会っているので、思いがけない邂逅はおそらく圧倒的に少なくなったのではなかろうか。例えば大きな講義室で、たまたま一緒になった人と話したり、あるいは講義を聞きながら周囲にいる人々を観察したり、ゼミの研究室で思いがけない本を教員の書棚に見つけたり、教室という空間は単に授業に参加する以上の、いろんなチャンスに満ちているのに、学生たちはそれを奪われている。

 オンラインで代替できることは多い。ビジネスの世界ではおそらくいろんな合理化、効率化が進むのだろう。コロナ後の世界はもう以前の姿にはもどらないと言われるけれど、大学は、隙間や猶予がたくさん残る場所であってほしい。大学の4年間は、効率を度外視した迂遠な勉強がゆっくりできる時間であってほしい。大学で学ぶことは曖昧な迷いに満ち、無駄があって、非効率でいいのだと、認められる世界であってほしい。未来が隙間なく秩序立って、意味のあることで満たされた世界にならないことを祈ります。

 

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漢文講読とオンライン授業

 

総合歴史学科 准教授 

渡邉 将智 

 

 新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、本学では2020年度前期はすべての授業がオンライン方式で行われ、後期も対面授業とオンライン授業の併用が続いた。この文章を執筆中の20211月上旬、再びオンライン授業が全学的に行われている。こうした授業形態は初めての経験であるため、2020年度は例年とは異なる形での試行錯誤の連続であった。その一例として、前期の担当科目「アジア史講読1」の場合を書き留めておきたい。

 この科目は『三国志』をテキストとして漢文史料を輪読するものである。通常であれば、受講者にテキストの書き下し文と現代日本語訳を口頭で答えてもらい、それに対して添削を加える。その際には、教室のホワイトボードにテキストをすべて書き出し、そこに返り点や送り仮名を順番に振りながら文の構造などを解説する。時にはテキストに登場する器物の写真を回覧することや、登場人物の動作を実演しながら説明することもある。

  この科目をオンライン授業として実施するにあたり、会議システムを活用するライブ方式を選択した。漢文の読解能力を向上させるためには、基本文法の習得、前後の文脈の把握、文字列から情景をイメージする想像力の涵養が必要となる。こうした技法は、受講者自身が字書を引きつつ繰り返し読解する機会を設けなければ身に着きづらいものである。従来の授業形態を再現するためには、オンデマンド方式で解説動画を配信するよりも、ライブ方式の方が適していると考えたのである。

 当初は教室にウェブカメラ内蔵のタブレット端末を持ち込み、受講者側の端末と会議システムで繋いだ上で、ホワイトボード上のテキストをカメラで映そうとした。漢文史料をテキストの前後の文脈を把握しながら読解するためには、ホワイトボード上のテキストの一部ではなく全体が受講者の視界に常におさまることが望ましい。しかし、ホワイトボード全体をカメラの視野におさめるためには、タブレット端末をホワイトボードから十分に距離をとって設置する必要がある。教員の立場からすれば、端末とホワイトボードの間が離れ過ぎていると、受講者の反応を会議システムの画面で逐一確認しながら授業を運営するには不便である。この方法は断念せざるを得なかった。

 結局、ホワイトボードの代わりにパワーポイントを用いてスライドを作成し、それを会議システムで画面共有した。通常の授業形態になるべく近づけるために、スライドにはテキストを全文掲載するとともに、語句や文法の説明を加えた。また、アニメーション機能を活用して、テキスト上に返り点と送り仮名が順番通りに表示するようにした。

 ライブ方式の授業には、スライドの活用によって板書のための時間を節約し、その余剰分を文法などの説明にあてることができるという利点がある。また、器物などの写真を画面上に映し、それらの形状を視覚的に示すことも容易であった。その反面、受講者の様子に応じて板書のように柔軟に説明を補うことや、登場人物の動作を実演することは難しく感じた。ライブ方式での漢文講読の授業経験が増えれば、それに適した授業運営の技術も開発できるのかもしれない。しかし、受講生と直接向き合いながら漢文の読解力を養うためにも、一日も早く事態が収束することを願うばかりである。

 

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初めてのオンライン授業

 

総合歴史学科 講師 

  

 

 新型コロナウイルスの影響で入学式や宿泊研修など多くの行事がなくなり、例年とは違った、オンライン授業という形で新学期がスタートしました。初めてのオンライン授業ということで最初は戸惑いもありましたが、オンライン授業に向けての研修会、大学e-Learningサポートのお陰で最初の一歩を踏み出すことができました。

 大学にはインターネット上から学内システムにログインすれば、授業に使う資料のダウンロードや先生からの連絡が確認できるシステムがコロナのずっと前からありましたが、今まで利用しなかった自分を悔いながら作業に取り組みました。

 オンライン授業では、自分の好きな時間に予定に合わせて視聴できるオンデマンド型授業に決めました。初めて韓国語に触れる学生も多いので何度でも繰り返し視聴できるメリットがあるからです。WebClassで行う小テストもクイズ感覚で気軽にできるという想像以上に良いことが多かったです。静かな校内が寂しい時もありましたが、新たな生活様式や授業方法の模索など、発見の多い一年でした。

 

 

教員コラム 特別編「オンライン授業をふりかえって(第2回)」はこちら

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