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総合歴史学科授業・課外研修など

【学生の声】2019年度 社会教育実習報告

2019-09-30

御津公民館での学び 〜社会教育実習を終えて〜

 

総合歴史学科4年 近藤 吉純

 

 8月末から9月半ばにかけての約二週間にわたる御津公民館での実習は、私にとって非常に多くの学びを得る機会となりました。その中でも特に貴重に感じられた体験、学びが二つあります。

 一つは「御津座談会」を開催させていただいたことです。実習初日、立花館長より「実習を通して学びたいことを明確にしなさい。その実現のために必要ならば館内に留まらず自由に行動して構わないし、協力も惜しまない」というお言葉を頂きました。そこで私はかねてより関心があった地域資源の活用と発信に焦点を絞り「御津の魅力と課題を知り、それを発信する」ことを実習の一つのテーマとしました。

 その手段として職員の皆さまのご協力のもと、地域の方々に御津の裏話やおすすめの史跡、場所などについて教えていただく、「御津座談会」を開催しました。中でも特に興味深かった場所は、後日、休日を含め空き時間を用いて見学に赴き、座談会の内容と見学の感想を紙面にまとめ、発表することによって、一つの学びの形とさせていただきました。

 座談会と現地見学を通して、地域に根付いた御津の魅力、そして課題の双方について学ぶことができたと感じています。特に大きな気付きは、御津に住む方々が皆、地元の歴史や文化、風景や日常を大切にされているということです。私は実習当初、御津の方々はあまり地元の資源や歴史に関心がないのではないかと先入観を抱いていました。しかし、その認識が間違いであったことに気付くと同時に、地域の方々が大切にする御津の良さ、価値を外部に発信する必要があることを感じました。その具体的手法については、二週間の実習で答えを得ることができなかったため、今後、自分にとっての課題として向き合いたいと考えています。

 二つ目の貴重な学びは「公民館で働く姿勢」についてです。実習期間中、「スマイルカフェ」「日本語教室」「原遺跡講演会」「ふるさと探検隊」など多くの主催講座、クラブ活動への参加、見学を行いました。また、公民館を含む社会教育施設が意見交換を行う「進みつ会」、地域サロンの敬老会など様々な場所にも同行させていただきました。

 これらの見学、同行は、自分の間違った先入観を改め、公民館の在り方、御津という地域の実情について知る機会となりました。具体的には、公民館は楽しみながら学ぶ場所であること、御津には自主的なサロン運営ができないほど高齢化が進んだ地区があること、そのような地区の交流の在り方についてはまだ模索段階であること、などの気付きが挙げられます。

 そして同時に、地域社会や社会教育はとても複雑で「答えのない課題」が溢れており、学校で学ぶ「知識」だけでは到底解決できるものではないのだと痛感することにもなりました。その中で私は一つ、社会教育を勉強する上で軸ともなる、大きな学びを得ることができました。それは、公民館、社会教育という視点に立つからには、なによりもまず地域のこと、そこに生きる方々のことを知る必要がある、ということです。

 地域のお祭りがあれば顔を出し、外出先では笑顔で挨拶をして「腰は治ったん?」とご近所さんのような距離で地域の方々と接する。職員という立場にありながらも、地域の方に教えてもらう、必要であれば助けてもらうという姿勢を忘れない。そのような公民館の皆さまの姿を見て、公民館ひいては社会教育の役割は、地域の方々の先に立って導くものではなく、共に作り上げていくものなのだと気付くことができました。

 そしてまた、地域の方々に敬意を持って誠実に向き合うことが、公民館や社会教育を学ぶ人間に最も求められることなのではないかとも感じました。

 御津公民館での実習は私にとってかけがえのない経験となりました。公民館と御津をより好きになる機会を与えて下さった御津公民館の皆さま、地域の皆さまに、心より感謝申し上げます。

 

2019年9月(『社会教育実習報告書』より抜粋)