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教育心理学科その他

リレーエッセイ 「心理学とわたし」

2019-02-22

教育心理学科は、養護教諭や特別支援学校教諭の養成課程のある教員養成系学科ですが、同時に、認定心理士資格が取得できる教育系の心理学科でもあります。 

本学科において心理学は、養護と特別支援という2つの領域を仲立ちする学問領域と位置づけられます。心のケアもできる養護教諭、心理療法の知識を備えた特別支援学校教諭が育ってほしいと考えています。 

もちろん、大学院に進学し臨床心理士養成課程を修め、心理臨床の専門家として活躍することも期待しています。というわけで、教育心理学科の学生は、何らかの形で心理学とかかわりますし、学科所属の教員も、専門こそ違いますが、多かれ少なかれ心理学と接点をもっています。 

そこで、在学生や高校生が心理学により興味をもったり、教育心理学科への関心が深まることを期待して、学科教員がそれぞれの立場で心理学とのかかわりについてリレーエッセイの形で語ることにしました。 

 
 

 

心理学とわたし

林 秀樹

 今からおよそ10年前,高校3年生の私は進路選択で躓いていました。いろいろ悩んだ末,「人ってなんでこんな行動しちゃうんだろう?」「なんでこんなこと言っちゃったんだろう?」など,幼いころから人の行動が気になっていたことを思い出し,人のこころのことを深く知りたいと思いました。心理学とわたしの出会いは,そんな素朴な疑問がきっかけでした。

 その後,大学で臨床心理学に触れ,「精神分析」という学問に出会い,そこで自分の長年?の問い対する一つの答えにたどり着きました。1901年にFreudによって執筆された『日常生活の精神病理学にむけて』という論文です。普段の生活の中で人が体験する間違い(言い間違い,聞き間違い,思い違い,度忘れ,物忘れなど)のことを錯誤行為と言いますが,この論文の中には錯誤行為のメカニズムが書いてありました。そのメカニズムは,無意識の中に抑圧された願望が錯誤行為として表現されている,というものです。このメカニズムに関する理論の是非はさておき,人のこころの中に無意識の領域が存在し,その領域が私たちの意識的な言動に何らかの影響を与えている,という理解は納得できるものでした。しかし,実際に精神分析の本を読み進めていくと,当時の私はその理論の難しさに圧倒され,さらに踏み込むことができませんでした。

 臨床心理学を学ぶ中で臨床心理士になりたいとの思いを強めた私は,大学院に入学し,そこで多くの良き先生方との出会いに支えられ,精神分析を学ぶ機会を得ました。今ではこの考え方を軸にしながら,大人や子どもの心理療法,研究を進めています。

 

写真は精神分析を学ぶ中で出会い,実際にお世話になった先生方の著書です