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就実公開講座後期第3回 平成30年9月29日(土)

2018-10-01

「言葉だけがコミュニケーション?

 

 ジェニファー スコット(人文科学部 実践英語学科 教授)

 

 

 

 スコット教授は古井由吉に関する研究の中で「能楽」を知り、それを切っ掛けに「狂言」を演じるまでになられました。そのような流れの中で「言葉だけがコミュニケーション?」を講演されました。
欧米人は高校時代にシェークスピアの講義を聞き、社会人となってからはシェークスピア演劇を敬遠する傾向だ、と言うことです。本学では毎年初夏にイギリスからシェークスピア劇を演じる劇団を招き講演を開いており、これは毎年、盛況であります。この違いは何でしょうか。
同じように日本人から見た「狂言」は、学生からするとほとんど知らないものであり、狂言と能の違いさえわかっていないようです。一方、「狂言」は外国人から見ると興味をそそるもの、受け入れやすいものとして存在するようです。
スコット教授が本学に就任された頃より狂言に費やす時間が増えたようです。県内の狂言の指導者に恵まれたこともあり、どんどん「狂言」にのめりこまれたようです。スコット教授の初演は「しびり」で2006年のことです。指導者の田賀屋夙生(たがや はやお)氏のもと、オーストラリアにおいても高校でのワークショップ開催やスコット教授の出身大学があるタスマニア島ホバート市での講演をお手伝いされました。高校でのワークショップは「すり足」、「お酒を飲む様子」、「笑い方・泣き方」や扇の使い方などを演劇部の生徒を指導され、生徒達も大変満足されたそうです。ホバート市での講演では事前に「狂言」を講演され理解を促し、3演目(「しびり」、「神鳴」、「棒しばり」)を披露されたようです。言葉のわからない外国人であっても笑っていただくところで笑ってもらえたようです。
また、岡山においても、「タスマニア大学日本語文化学科伝統芸能集中講義」の一環として、後楽園で狂言ワークショップの開催をお手伝いされました。残念ながらの舞台は工事中で業できなかったのですが、狂言に関する体験をタスマニア大学日本語文化学科の学生さん達がされました。歩き方、能面の鑑賞、装束をつけてもらっての演技指導、附子の講演に及んだそうです。
「狂言」の特性として、短いストーリー、ユーモラスさ、声のトーンや大きさ・表情でわかりやすい、舞台設備もほとんどないため観客が容易に想像することなどが挙げられます。取り扱う内容は人間の強さ・弱さ・狡猾さなどの人間性がテーマであるので、言語、国境、年代、年齢、文化をも超えるものであると言い得るものでしょう。「狂言」というパフォーマンスは、言葉も大切ですが、言葉がなくても成立するところに醍醐味があるように思われます。