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お知らせ就実公開講座

就実公開講座 前期第3回 平成30年6月16日(土)

2018-06-18

「近世都市大阪における庶民の暮らし」

 

 三田 智子(人文科学部 総合歴史学科 講師)

 

 2018年度第3回の就実公開講座として総合歴史学科の三田智子講師が「近世都市大坂における庶民の暮らし」と題して講演された。江戸時代には忠義孝行に励むべきことが高札などに掲げられ奨励され、18世紀末になるとその褒賞制度が設けられた。例として 1796年に褒賞を受けた河内屋次郎吉母ゆきなどの例が紹介された。 ゆきは幼いころから病身の両親を介抱しながら働き、成長後も火災や配偶者の病気(その結果、離縁)など過酷な境涯の中で懸命に家族を支え続けた女性であった。それらの記録を読むと、社会保障のない時代の生活実態、社会制度の不条理、その中で女性の置かれた状況などが浮かび上がってくる。大坂の町家では、借家を女名義で借りることは禁止されていたため、夫に先立たれると借家を出て行くか、婿養子をとる必要があった。つまり婚姻や居住地、職業の選択がそのような社会のしくみの制約を受け、女性の人生が大きく左右された時代であった。近世大坂を舞台にした話だったが、今日の社会保障や医療制度問題にも通じる内容であり、約90の受講者は熱心に受講され、講演後、活発な質疑応答が行われた。