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お知らせ 就実公開講座
就実公開講座前期第4回 令和4年6月25日
2022-07-05
運動の哲学入門
松本潤一郎(人文科学部 表現文化学科 教授)
2022年度前期講座第4回(6月25日)では、フランス哲学が専門の松本潤一郎教授より「運動の哲学入門」と題した講座が行われました。
講座では「動き」を題材に、古代ギリシャから20世紀にかけて、哲学の世界では「動き」をどうとらえてきたのかについてのお話がありました。
まず古代からはゼノンのパラドックス(パルメニデスの主張「存在の不動説」を擁護する立場)がとりあげられました。
次に近世から、微分を発明した哲学者ライプニッツによる接線という「無限小量」の析出方法が紹介され、これに対する近代の応答の一つとして、ヘーゲルによる「無限小量」に対する批判的考察(悪無限から真無限への移行)がとりあげられました。
そして20世紀に入って、ベルクソンが映画への批判(「映画は偽りの運動である」)やゼノンへの批判を通して「持続」という概念を提示したことが示されました。そのベルクソンの思想を或る意味で継承したドゥルーズは、『差異と反復』でヘーゲルよりもライプニッツを評価して具体的運動を実践的に把握する哲学を模索したこと、また、映画を現代の新たな思考の運動であると捉えて『シネマ1:運動イメージ』におけるベルクソンによる三つのテーゼの注釈などを通して映画に対応する哲学の創建を試みたことなどが、示されました。
猛暑の中での開講でしたが、ご参加くださった22名の受講生はメモを取りながら熱心に聴講していました。受講生の皆さんは、世界のとらえかたについて新たな知見を得ることができたのではないかと思います。配布された参考文献一覧を参考に、後日各自が学びを深めてくださることが期待されます。