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就実公開講座前期第2回 令和4年6月11日

2022-06-23

平安貴族は「走る」のか −「動きのことば」の日本語史−

               岩田 美穂(人文科学部 表現文化学科 准教授

 

 日本語史というものの片鱗に触れる機会は、身近なところでは国語の古文という形で、多くの人が得てきたものである。学生の頃は、単語に紐づいた「活用形」という謎の変化に戸惑い、苦手とした人も多かったかも知れない。

 本講義では、タイトルにあるように「動詞」に着目し、古典として書き残されている文書を紐解き、現代の言葉と比較・検証した結果を示していた。現代に至るまで様々な言葉の意味が変化し、またある言葉は淘汰されていた。奈良時代・平安時代からの書き言葉を理解してみると、現代語に比べ形容詞的表現が少なく、複合語にしたり接辞を付加したりすることで、動詞を複雑化させ、ニュアンスを持たせたものが利用されていることが多かった。試みに上代語の辞典で「あ~お」の項目に掲載されている動詞を現代語の動詞と比べてみると、約半数ほどが現代まで残っており、残りの半数は現代では使われていない。現代まで残らなかった動詞には、複合語や接辞の付いたより“複雑な”意味を持つ動詞が多い、運動を直接表す動詞より変化や状態を表す動詞が多いなどの特徴がみられた。反対に現代まで残っている動詞は、基本的な意味を表す動詞で、特に運動を表す動詞が多いようである。

 今後も若い世代が言葉を変化させ、更に千年後には言葉のありようもまた変わっているのではないか、という受講者とのディスカッションで会は締められた。