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人文科学専攻 その他

コラム 研究のひとこま 第9回  美術館収蔵品の調査と展示(3)大包平と池田継政

2022-03-29

第9回 大包平と池田継政
浅利尚民(人文科学研究科・人文科学部准教授。日本美術史・日本文化史)

前回・前々回と、美術館に所蔵されているにもかかわらず研究されていなかった資料を取り上げました。今回は反対に、所蔵されていないものをどのように研究するかについて、大包平という太刀を中心に紹介していきたいと思います。

大包平(国宝「太刀 銘 備前国包平作」)は、平安時代に備前国で活躍した包平によって造られた太刀で、江戸時代を通じて岡山藩主池田家に伝えられた宝刀でした。明治時代になってからも、家宝の筆頭として大切に保管されてきましたが、太平洋戦争終結後の1967年(昭和42年)に当時の文部省に買い上げられ、現在は東京国立博物館に収蔵されています。

このように、残念ながら大包平は50年以上前に池田家を離れており、林原美術館の所蔵品ではありませんでした。しかし池田家伝来品を引き継いだ林原美術館の資料の中に、宝暦14年(1764)6月朔日に記された、大包平に関する史料(御代々御譲物)を見つけることができました。また従来から知られていた、明治時代の池田家の宝物目録である、『調度記』(岡山大学附属図書館池田文庫)に記された大包平の記録とあわせると、大包平が池田家の歴代藩主に譲り継がれるようになった背景には、第3代藩主池田継政の関与があったことが分かってきたのです。

以前ご紹介したように、池田継政は歴代藩主の肖像画を制作したことで知られていますが、池田家伝来品の中には継政が修補を施したり、箱書きを記したりしたものが散見されます。つまり継政は、自家の宝物を直接見て調べたうえで、整理作業も行っていたのです。大包平が池田家の宝刀として受け継がれていくことになったのも、継政が行っていたこのような活動に関係しているものと考えられます。

今回は直接の資料がない場合でも、周辺にある断片的な情報を集めて再構築することにより、資料が経てきた歴史に迫ることができる事例として大包平を取り上げました。なお私自身は大包平を展示することはできませんでしたが、いつの日か製作された地であり、近世から近代までを過ごした岡山の地で、大包平が再び展示されることを願っています。

参考文献
石坂善次郎編『池田光政公伝』(侯爵池田家、1932年)
浅利尚民「大包平の伝来と役割の変遷ー池田家の什器から博物館資料へー」(『吉備地方文化研究』28、2018年)
e国宝 - 国立文化財機構所蔵 国宝・重要文化財 「太刀 銘備前国包平作(名物大包平)」https://emuseum.nich.go.jp/