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人文科学専攻 その他

コラム 研究のひとこま 第8回  美術館収蔵品の調査と展示(2)石谷家(いしがいけ)文書の発見と発表

2022-03-22

第8回 石谷家文書の発見と発表
浅利尚民(人文科学研究科・人文科学部准教授。日本美術史・日本文化史)

前回は、美術館に所蔵されているもののほとんど研究されていない資料として、岡山藩主池田継政が制作した肖像画についてお伝えしました。今回も同様に、2013年に発見され翌年6月に発表して大きな話題となった、石谷家文書(林原美術館所蔵)について紹介していきたいと思います。

石谷家文書は全3巻(47通)からなる16世紀の古文書群で、林原美術館のコレクションを築き上げた岡山の実業家の故林原一郎氏(1908~61)の蒐集品でした。同氏がいつ、だれから入手したのかは不明ですが、林原美術館が開館した1964年には同館の所蔵となっています。しかし調査を開始した時点では、大学や博物館などでの研究や展示に供されたことはなく、約49年間にわたって収蔵庫に眠り続けていました。

岡山県立博物館の内池英樹氏(当時、現在は岡山県教育委員会)と共同研究を進めていくうちに、この資料は土佐国の戦国大名である長宗我部元親、彼の親戚で明智光秀に仕えていた斎藤利三、そして利三の実兄である石谷頼辰などに関する文書群であることが分かってきました。研究を始めたころは、「元親」という署名を備中国の戦国大名である三村元親のものかとも考えましたが、実は土佐の長宗我部のものだったのです。中には1582年(天正10年)に発給された文書も含まれており、同年6月に発生した本能寺の変を取り巻く四国の情勢がうかがえるものも含まれていました。

これらの調査結果は、情報の公平性を期すために、記者発表という形で公表することにしました。2014年6月23日の昼過ぎに行った発表の概要は、夜にはNHK総合「ニュースウオッチ9」でも取りあげられました。また全国紙や地元紙などでは、翌日の朝刊1面や社会面で大きく扱われ、インターネットポータルサイト「YAHOO! JAPAN」のトップページにも記事が配信されました。その後は、林原美術館、岡山県立博物館、そして長宗我部氏ゆかりの高知県立歴史民俗資料館で展示されたのち、翌2015年6月には、『石谷家文書 将軍側近のみた戦国乱世』として研究結果を書籍として出版することができました。現在では、戦国期の研究には欠くことのできない史料として、研究者の論文に引用されるとともに、全国で行われている展覧会でも公開されています。

この石谷家文書に関する一連の出来事を通じて、資料調査の意義を改めて認識するとともに、情報発信の重要性についても強く意識するようになりました。

参考文献
平成26年度 高知・岡山文化交流事業Ⅲ 特別展『長宗我部氏と宇喜多氏―天下人に翻弄された大名―』(高知県立歴史民俗資料館、2014年)
浅利尚民・内池英樹編『石谷家文書 将軍側近のみた戦国乱世』(吉川弘文館、2015年)
浅利尚民「文化財の研究と発信」(『中古文学』103、2019年)